オーペナにっき!

パワプロのペナントモードについて書きます。

【パワプロ2020】打率と能力の関係について【ペナント検証】

更新履歴

更新日
Ver
内容
2022/02/26
1.30
  • 標本サイズを3053から3563に変更
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ6)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/09/19
1.21
アイキャッチ画像およびデータセットを更新
2021/09/09
1.20
  • 標本サイズを2543から3053に変更
  • 説明変数に対戦球団の中継ぎ人数を追加
  • 説明変数に1番打者および2番打者を追加
  • 説明変数に各ランク特能の二乗項を追加
  • 説明変数「バント〇&バント職人」を「バント〇」と「バント職人」に分類
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ5)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/05/01
1.11
データセットを更新
2021/04/26
1.10
  • 標本サイズを2033から2543に変更
  • 説明変数に各基礎能力の二乗項を追加
  • 説明変数に「スイッチヒッター」を追加
  • 説明変数「コースヒッター」を「イン&アウトコースヒッター」と「ハイ&ローボールヒッター」に分類
  • 説明変数に「調子安定」「調子極端」を追加
  • 説明変数に対戦球団の平均失点の対数を追加
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ4)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/02/28
1.00
公開



0.目次


1.はじめに

今回は打率と能力の関係について検証します。検証の意義や目的についてはこちらの記事をご覧下さい。


2.方法

・Ver.1.05、1.06、1.07、1.13、1.16の環境で検証
・リーグ編成は弄らずにセパ12球団のチーム成績及び個人成績を35回分記録
・データセットこちらを使用
・各チームの起用法は特能の有無や左右のバランスを見ながら筆者が恣意的に決定
・投手は50イニング以上投げた選手のみ分析に利用
・日程は早送りで開幕戦からシーズン終了までノンストップで消化し、データの記録が終わったらリセット


3.設定

・能力変化、ケガ、疲労、ノリノリ&スランプなし
・トレード、新外国人獲得なし
・選手の調子は「ふつう」で固定
・キャッチャーリード効果は「ふつう」に設定
・1軍と2軍の入れ替えなし
・投手は起用法を「おまかせ」に設定
・先発は6人、中継ぎは7人または6人に固定
・投手のスタミナは「全回復」に設定
・野手はスタメン、打順、守備位置を固定
・野手の起用法は「フル出場」に設定
・セの指名打者は9番に固定
交流戦は全てパの主催試合に設定


4.用語の説明

・被説明変数、説明変数
それぞれ数式のYとXに当たる部分。ここに選手のデータを当てはめることで係数(能力の効果)を算出する。


・標準誤差(S.E.)
係数の標準誤差。小さいほど精度の高い推定。


・t値
係数の有意性(意味がある説明変数かどうか)を検定するための統計量。概ね絶対値が2より大きければ問題ない。


・p値
説明変数として意味の無い(係数がゼロである)確率。小さければ有意(意味のある説明変数)と判断する。


・標本標準偏差(s)
回帰式の誤差の標準偏差。小さい方が良い。


・(自由度修正済み)決定係数
被説明変数の動きのうち、説明変数の動きで説明できる割合(回帰式の当てはまりの良さ)を示す。1が最も良い。


赤池情報量基準(AIC
回帰式の当てはまりの良さを示す。小さいほど良い。


5.変数の説明

・左打者、スイッチヒッターおよび打順は該当する選手を1、それ以外を0で分類
・チャンスなどのランク特能はAを7、Gを1で分類
・アベレージヒッターなどの非ランク特能は所持を1、非所持を0で分類
・対失点は対戦投手の成績の傾向を表す変数で、(同リーグ5球団の平均失点)×125/143+(他リーグ6球団の平均失点)×18/143で計算
・リーグ1~6は各期間における対戦投手の能力差を表す変数で、パ・リーグを1、セ・リーグを0で分類


6.検証

今回は収集したデータのうち、打率が.150以上である3563人のデータを用います。
打率を被説明変数に、野手の能力及びその他の情報を説明変数に加え、重回帰分析を行いました。

被説明変数
打率
標本サイズ
3563
係数
S.E.
t値
p値
定数項
-.32268
.07271
-4.438
0.000
左打者
.00399
.00104
3.840
0.000
.00453
.00256
1.771
0.077
対中継ぎ人数
.00311
.00157
1.978
0.048
1番打者
.00746
.00139
5.355
0.000
2番打者
-.00443
.00135
-3.278
0.001
3番打者
.00745
.00171
4.368
0.000
4番打者
.00588
.00172
3.422
0.001
5番打者
.00420
.00129
3.249
0.001
弾道
-.01209
.00576
-2.098
0.036
(弾道)2
.00252
.00095
2.655
0.008
ミート
.00289
.00026
11.272
0.000
(ミート)2/100
-.00101
.00025
-4.001
0.000
パワー
.00084
.00038
2.205
0.027
(パワー)2/100
-.00066
.00031
-2.146
0.032
走力
.00004
.00024
0.182
0.856
(走力)2/100
-.00001
.00020
-0.034
0.973
チャンス
.00561
.00230
2.435
0.015
(チャンス)2
.00001
.00028
0.041
0.967
対左投手
.01187
.00175
6.763
0.000
(対左投手)2
-.00056
.00021
-2.615
0.009
走塁
-.00635
.00418
-1.517
0.129
(走塁)2
.00057
.00041
1.399
0.162
恐怖の満塁男
-.00061
.00429
-0.141
0.888
アベレージヒッター
.01678
.00272
6.180
0.000
パワーヒッター
.00338
.00213
1.589
0.112
プルヒッター
-.00061
.00100
-0.608
0.543
広角打法
.00077
.00134
0.578
0.563
流し打ち
.00978
.00112
8.771
0.000
固め打ち
.00396
.00096
4.142
0.000
粘り打ち
.00726
.00138
5.273
0.000
バント〇
.00277
.00106
2.624
0.009
バント職人
.00059
.00219
0.271
0.786
内野安打〇
-.00004
.00123
-0.031
0.975
初球〇
.00348
.00097
3.593
0.000
チャンスメーカー
.01228
.00211
5.814
0.000
-.00066
.00087
-0.761
0.447
サヨナラ男
.00230
.00110
2.088
0.037
意外性
.00295
.00208
1.416
0.157
逆境〇
.00650
.00132
4.909
0.000
ヘッドスライディング
.00105
.00148
0.706
0.480
いぶし銀
-.00011
.00340
-0.033
0.974
威圧感
.00436
.00526
0.829
0.407
ラインドライブ
.00192
.00246
0.781
0.435
イン&アウト
コースヒッター
.00331
.00143
2.318
0.020
ハイ&ロー
ボールヒッター
.00579
.00131
4.408
0.000
ダメ押し
-.00087
.00208
-0.420
0.674
対変化球〇
.00448
.00159
2.816
0.005
カット打ち
.00348
.00177
1.968
0.049
悪球打ち
-.00367
.00136
-2.700
0.007
三振
.00056
.00100
0.564
0.573
併殺
-.00180
.00098
-1.835
0.067
調子安定
-.00237
.00344
-0.687
0.492
調子極端
.00070
.00155
0.449
0.653
選球眼
-.00432
.00089
-4.862
0.000
キラー
.00265
.00102
2.604
0.009
季節男
-.00158
.00126
-1.256
0.209
ミート多用
.00145
.00197
0.734
0.463
強振多用
-.00081
.00125
-0.650
0.516
積極打法
.00056
.00099
0.564
0.573
慎重打法
.00224
.00113
1.984
0.047
積極走塁
-.00071
.00107
-0.658
0.511
チームプレイ〇
.00433
.00131
3.296
0.001
l_対失点
.05783
.01149
5.034
0.000
リーグ1
-.00829
.00203
-4.081
0.000
リーグ2
-.00804
.00164
-4.903
0.000
リーグ3
-.00368
.00128
-2.868
0.004
リーグ4
-.00100
.00186
-0.534
0.593
リーグ5
-.00779
.00139
-5.586
0.000
リーグ6
-.00523
.00161
-3.252
0.001
.01989
修正済み決定係数
0.660
-17734.9

係数が正の能力は打率良化、負の能力は打率悪化を表しています。概ね青特は正、赤特は負となっています。
次に、打率への影響が小さいと予想される変数を取り除いて推定を行います。

被説明変数
打率
標本サイズ
3563
係数
S.E.
t値
p値
定数項
-.33851
.07054
-4.798
0.000
左打者
.00399
.00095
4.185
0.000
.00484
.00242
2.000
0.046
対中継ぎ人数
.00307
.00155
1.984
0.047
1番打者
.00773
.00133
5.808
0.000
2番打者
-.00392
.00127
-3.079
0.002
3番打者
.00824
.00154
5.336
0.000
4番打者
.00673
.00157
4.276
0.000
5番打者
.00429
.00127
3.380
0.001
弾道
-.01120
.00511
-2.193
0.028
(弾道)2
.00230
.00084
2.726
0.006
ミート
.00288
.00025
11.692
0.000
(ミート)2/100
-.00100
.00024
-4.221
0.000
パワー
.00087
.00034
2.541
0.011
(パワー)2/100
-.00068
.00027
-2.470
0.014
走力
.00004
.00003
1.222
0.222
チャンス
.00561
.00041
13.643
0.000
対左投手
.01137
.00160
7.128
0.000
(対左投手)2
-.00049
.00019
-2.539
0.011
走塁
-.00068
.00043
-1.576
0.115
アベレージヒッター
.01550
.00233
6.663
0.000
パワーヒッター
.00290
.00200
1.455
0.146
流し打ち
.00927
.00105
8.791
0.000
固め打ち
.00419
.00090
4.662
0.000
粘り打ち
.00714
.00123
5.780
0.000
バント〇
.00256
.00098
2.627
0.009
初球〇
.00367
.00090
4.090
0.000
チャンスメーカー
.01218
.00198
6.143
0.000
サヨナラ男
.00177
.00098
1.803
0.071
意外性
.00267
.00199
1.346
0.178
逆境〇
.00650
.00112
5.800
0.000
イン&アウト
コースヒッター
.00319
.00134
2.383
0.017
ハイ&ロー
ボールヒッター
.00604
.00114
5.287
0.000
対変化球〇
.00461
.00148
3.118
0.002
カット打ち
.00380
.00168
2.255
0.024
悪球打ち
-.00347
.00131
-2.659
0.008
併殺
-.00147
.00091
-1.618
0.106
選球眼
-.00428
.00084
-5.114
0.000
キラー
.00236
.00098
2.414
0.016
季節男
-.00165
.00120
-1.374
0.169
慎重打法
.00217
.00097
2.240
0.025
チームプレイ〇
.00471
.00110
4.289
0.000
l_対失点
.05805
.01131
5.134
0.000
リーグ1
-.00795
.00198
-4.006
0.000
リーグ2
-.00775
.00157
-4.952
0.000
リーグ3
-.00350
.00120
-2.922
0.003
リーグ4
-.00065
.00183
-0.356
0.722
リーグ5
-.00764
.00136
-5.623
0.000
リーグ6
-.00531
.00157
-3.390
0.001
.01986
修正済み決定係数
0.661
-17767.6

上は分析に必要がないと判断した変数を取り除いたモデルの推定結果です。この結果をもとに考察を進めます。


7.考察

特に気になった結果について以下に記述します。


・ 左打者
防御率の検証では悪化に寄与した左打者のダミー変数が良化に寄与しました。したがって、左の有利不利は標本によって変化すると予想されます。


・弾道
一乗項が正、二乗項が負となっているため、上昇するにつれて打率への寄与は増加します。弾道3→4でのみ明確な影響が見られるという結果になりました。ただ、今回の標本には弾道1の選手が含まれていないため、あくまで弾道2~4の中での比較であることに留意する必要があります。

効果
2→3
.000
3→4
.005


・ミート
一乗項が正、二乗項が負となっているため、上昇するにつれて打率への寄与は減少します。他の基礎能力の影響が小さいことから、打率の高い打者を育成するためにはミートを優先的に上げることが重要であると言えます。

効果
30→40
.022
40→50
.020
50→60
.018
60→70
.016
70→80
.014


・パワー
一乗項が正、二乗項が負となっているため、上昇するにつれて打率への寄与は減少します。また係数こそ小さいものの、C以上では寄与がマイナスとなりました。

効果
30→40
.004
40→50
.003
50→60
.001
60→70
-.000
70→80
-.001


・対左投手
一乗項が正、二乗項が負となっているため、上昇するにつれて打率への寄与は減少します。F→Dとなるだけで打率は約.017良化します。影響力の大きな特能のひとつです。

効果
G→F
.010
F→E
.009
E→D
.008
D→C
.007
C→B
.006
B→A
.005


・アベレージヒッター、チャンスメーカー
他の特能と比べても段違いの影響力です。首位打者を狙うなら絶対に習得すべき能力です。


・プルヒッター、広角打法
どちらも強振時に発動する能力であることが関係していると考えられます。


・悪球打ち
.003の悪化となりました。純粋な赤特である三振や併殺よりも打率へのマイナスは大きいです。


・選球眼
.004の悪化となりました。これでIsoD上がるだけなら相当弱い...


8.特能のランク分け

以上の結果を踏まえて、係数を基準に特能をランク分けしました。「有意差なし」は打率に影響する可能性が低いことを意味しています。


係数
特能
.015~
アベレージヒッター
.010~.015
チャンスメーカー
.007~.010
流し打ち粘り打ち
.005~.007
チャンス対左投手逆境〇ハイ&ローボールヒッター
.003~.005
固め打ち初球〇イン&アウトコースヒッター対変化球〇カット打ちチームプレイ〇
.000~.003
バント〇サヨナラ男慎重打法
有意差なし
走塁恐怖の満塁男パワーヒッタープルヒッター広角打法バント職人内野安打〇満塁男意外性ヘッドスライディングいぶし銀威圧感ラインドライブダメ押し調子安定調子極端ミート多用強振多用積極打法積極走塁
~.000
悪球打ち選球眼


9.推定の精度について

12球団を代表して、オリックス吉田正尚選手の35回分の打率と理論値を紹介します。

打率
理論値
1
.312
.300
.012
2
.293
.302
.009
3
.328
.303
.025
4
.285
.302
.017
5
.309
.301
.008
6
.326
.299
.027
7
.289
.299
.010
8
.281
.297
.016
9
.336
.298
.038
10
.295
.297
.002
11
.348
.320
.028
12
.335
.314
.021
13
.345
.317
.028
14
.307
.320
.013
15
.285
.320
.035
16
.280
.318
.038
17
.301
.313
.012
18
.329
.319
.010
19
.327
.321
.006
20
.320
.322
.002
21
.315
.314
.001
22
.323
.317
.006
23
.331
.315
.016
24
.327
.313
.014
25
.310
.313
.003
26
.294
.315
.021
27
.305
.315
.010
28
.353
.315
.038
29
.287
.315
.028
30
.294
.314
.020
31
.338
.322
.016
32
.295
.321
.026
33
.311
.320
.009
34
.326
.319
.007
35
.330
.320
.010


10.最後に

OPSとは異なる結果が出たので面白かったです。
次回は奪三振率と投手能力の関係について検証します。
最後までご覧いただきありがとうございました!


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