オーペナにっき!

パワプロのペナントモードについて書きます。

【パワプロ2020】防御率と能力の関係について【ペナント検証】

更新履歴

更新日
Ver
内容
2022/01/16
1.30
  • 標本サイズを4156から4861に変更
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ6)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/09/19
1.21
アイキャッチャ画像およびデータセットを更新
2021/09/04
1.20
  • 標本サイズを3451から4156に変更
  • 説明変数に所属球団の中継ぎ人数を追加
  • 説明変数に各ランク特能の二乗項を追加
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ5)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/05/01
1.11
データセットを更新
2021/04/25
1.10
  • 標本サイズを2750から3451に変更
  • 「球速」「コントロール」の対数変換を省略
  • 説明変数に各基礎能力の二乗項を追加
  • 説明変数に「最大変化量」「最小変化量」を追加
  • 説明変数に「鉄腕」「調子安定」「調子極端」を追加
  • 説明変数に対戦球団の平均得点を追加
  • 説明変数に新たなリーグダミー(リーグ4)を追加
  • 考察およびランク分けの修正
2021/02/12
1.00
公開



0.目次


1.はじめに

オーペナ勢なら誰しも一度は「この選手やたら活躍するけどなんでだろう」という疑問を抱いた経験があるはずです。そのような場合、「AはBやCと違って逃げ球を持っているから強い」「Aは足りない基礎能力を4球種と特能でカバーしている」といった比較をすることになると思います。
しかし、ただ漠然と能力を見比べるだけでは、比較に必要な情報を漏れ無く捉えることは難しく、ある能力を過大あるいは過少に評価してしまう可能性があります。この検証は、必要な情報を可能な限り考慮し比較することで、そうしたバイアスを取り除いた能力評価をすることを目標としています。


2.方法

・Ver.1.05、1.06、1.07、1.13、1.16の環境で検証
・リーグ編成は弄らずにセパ12球団のチーム成績及び個人成績を35回分記録
・データセットこちらを使用
・各チームの起用法は特能の有無や左右のバランスを見ながら筆者が恣意的に決定
・投手は50イニング以上投げた選手のみ分析に利用
・日程は早送りで開幕戦からシーズン終了までノンストップで消化し、データの記録が終わったらリセット


3.設定

・能力変化、ケガ、疲労、ノリノリ&スランプなし
・トレード、新外国人獲得なし
・選手の調子は「ふつう」で固定
・キャッチャーリード効果は「ふつう」に設定
・1軍と2軍の入れ替えなし
・投手は起用法を「おまかせ」に設定
・先発は6人、中継ぎは7人または6人に固定
・投手のスタミナは「全回復」に設定
・野手はスタメン、打順、守備位置を固定
・野手の起用法は「フル出場」に設定
・セの指名打者は9番に固定
交流戦は全てパの主催試合に設定


4.用語の説明

・被説明変数、説明変数
それぞれ数式のYとXに当たる部分。ここに選手のデータを当てはめることで係数(能力の効果)を算出する。


・標準誤差(S.E.)
係数の標準誤差。小さいほど精度の高い推定。


・t値
係数の有意性(意味がある説明変数かどうか)を検定するための統計量。概ね絶対値が2より大きければ問題ない。


・p値
説明変数として意味の無い(係数がゼロである)確率。小さければ有意(意味のある説明変数)と判断する。


・標本標準偏差(s)
回帰式の誤差の標準偏差。小さい方が良い。


・(自由度修正済み)決定係数
被説明変数の動きのうち、説明変数の動きで説明できる割合(回帰式の当てはまりの良さ)を示す。1が最も良い。


赤池情報量基準(AIC
回帰式の当てはまりの良さを示す。小さいほど良い。


5.変数の説明

・中継ぎと左投手は該当する選手を1、それ以外を0で分類
・ストレート系の球種は変化量1.80として計算
・対ピンチなどのランク特能はAを7、Gを1で分類
・キレ〇などの非ランク特能は所持を1、非所持を0で分類
・対得点は対戦打者の成績の傾向を表す変数で、(同リーグ5球団の平均得点)×125/143+(他リーグ6球団の平均得点)×18/143で計算
・リーグ1~6は各期間におけるDH制などのリーグ差を表す変数で、パ・リーグを1、セ・リーグを0で分類


6.検証

今回は収集したデータから、50イニング以上を投げ、かつ防御率が9点未満である4861人のデータを用います。
防御率を被説明変数に、投手の能力及びその他の情報を説明変数に加え、重回帰分析を行いました。

被説明変数
標本サイズ
4861
係数
S.E.
t値
p値
定数項
-19.115
7.565
-2.527
0.012
キャッチャー
-0.069
0.019
-3.612
0.000
中継ぎ
-0.740
0.037
-20.201
0.000
中継ぎ人数
-0.146
0.055
-2.658
0.008
左投手
0.146
0.034
4.293
0.000
球速
0.427
0.102
4.188
0.000
(球速)2/100
-0.154
0.034
-4.530
0.000
-0.045
0.009
-5.195
0.000
(コントロール)2/100
0.019
0.007
2.510
0.012
球種
0.917
0.355
2.587
0.010
(球種)2
-0.216
0.062
-3.488
0.000
総変化量
-0.386
0.071
-5.422
0.000
(総変化量)2
0.012
0.004
2.904
0.004
最大変化量
0.306
0.097
3.141
0.002
(最大変化量)2
-0.042
0.011
-3.920
0.000
最小変化量
-0.095
0.097
-0.975
0.330
(最小変化量)2
0.024
0.023
1.048
0.295
対ピンチ
-0.488
0.115
-4.260
0.000
(対ピンチ)2
0.027
0.014
1.916
0.055
対左打者
-0.373
0.077
-4.878
0.000
(対左打者)2
0.007
0.010
0.701
0.483
打たれ強さ
-0.220
0.098
-2.237
0.025
(打たれ強さ)2
0.010
0.012
0.863
0.388
ノビ
0.133
0.052
2.540
0.011
(ノビ)2
-0.033
0.006
-5.339
0.000
クイック
-0.029
0.101
-0.286
0.775
(クイック)2
-0.004
0.012
-0.346
0.730
鉄腕
-0.970
0.254
-3.820
0.000
キレ〇
-0.187
0.037
-5.024
0.000
逃げ球
-0.113
0.036
-3.114
0.002
尻上がり
-0.223
0.099
-2.261
0.024
-0.220
0.034
-6.505
0.000
牽制〇
-0.050
0.037
-1.326
0.185
リリース〇
-0.100
0.032
-3.106
0.002
低め〇
-0.118
0.093
-1.268
0.205
-0.004
0.049
-0.075
0.940
打球反応〇
-0.037
0.047
-0.787
0.431
球持ち〇
-0.189
0.033
-5.657
0.000
緩急〇
-0.143
0.036
-4.007
0.000
緊急登板〇
0.002
0.051
0.046
0.963
球速安定
0.006
0.037
0.154
0.878
内角攻め
-0.138
0.037
-3.727
0.000
回またぎ〇
-0.035
0.061
-0.574
0.566
軽い球
0.280
0.074
3.789
0.000
一発
0.285
0.032
8.889
0.000
四球
0.577
0.033
17.752
0.000
寸前
0.101
0.085
1.200
0.230
スロースターター
0.163
0.046
3.548
0.000
シュート回転
0.187
0.037
5.124
0.000
乱調
-0.023
0.060
-0.387
0.698
調子安定
0.154
0.060
2.574
0.010
調子極端
0.069
0.045
1.541
0.123
キラー
-0.150
0.036
-4.145
0.000
季節男
-0.150
0.098
-1.529
0.126
速球中心
-0.084
0.041
-2.029
0.042
変化球中心
-0.033
0.036
-0.910
0.363
テンポ〇
-0.030
0.042
-0.728
0.467
対得点
0.003
0.001
3.952
0.000
リーグ1
0.243
0.075
3.228
0.001
リーグ2
0.212
0.061
3.501
0.000
リーグ3
0.050
0.042
1.193
0.233
リーグ4
-0.076
0.066
-1.152
0.249
リーグ5
0.201
0.055
3.637
0.000
リーグ6
0.126
0.056
2.249
0.025
0.841
修正済み決定係数
0.545
12176.3

係数が正の能力は防御率悪化、負の能力は防御率良化を表しています。概ね赤特は正、青特は負となっています。
p値についてみると、10%以下の変数が過半数を占めているものの、クロスファイヤーや緊急登板〇など、10%を越えているものも存在します。これらの変数は防御率への影響が小さいと予想されるため、回帰式から取り除く方が全体としてはプラスに働く可能性が高いです。
よって、p値が高く、標本標準偏差AICを悪化させているような変数を取り除き、改めて推定を行いました。

被説明変数
標本サイズ
4861
係数
S.E.
t値
p値
定数項
-20.875
7.243
-2.882
0.004
キャッチャー
-0.069
0.019
-3.632
0.000
中継ぎ
-0.737
0.034
-21.660
0.000
中継ぎ人数
-0.145
0.055
-2.655
0.008
左投手
0.136
0.031
4.356
0.000
球速
0.450
0.098
4.602
0.000
(球速)2/100
-0.162
0.033
-4.966
0.000
-0.046
0.008
-5.407
0.000
(コントロール)2/100
0.019
0.007
2.701
0.007
球種
0.844
0.299
2.823
0.005
(球種)2
-0.201
0.055
-3.631
0.000
総変化量
-0.409
0.063
-6.496
0.000
(総変化量)2
0.013
0.004
3.633
0.000
最大変化量
0.345
0.091
3.794
0.000
(最大変化量)2
-0.046
0.010
-4.512
0.000
対ピンチ
-0.516
0.112
-4.624
0.000
(対ピンチ)2
0.030
0.014
2.212
0.027
対左打者
-0.320
0.014
-22.978
0.000
打たれ強さ
-0.137
0.014
-9.738
0.000
ノビ
0.134
0.052
2.600
0.009
(ノビ)2
-0.033
0.006
-5.472
0.000
クイック
-0.066
0.018
-3.645
0.000
鉄腕
-1.020
0.246
-4.141
0.000
キレ〇
-0.180
0.036
-5.056
0.000
逃げ球
-0.105
0.036
-2.916
0.004
尻上がり
-0.217
0.096
-2.256
0.024
-0.218
0.033
-6.634
0.000
牽制〇
-0.062
0.037
-1.684
0.092
リリース〇
-0.110
0.031
-3.533
0.000
低め〇
-0.111
0.092
-1.206
0.228
球持ち〇
-0.190
0.033
-5.783
0.000
緩急〇
-0.137
0.034
-4.024
0.000
内角攻め
-0.135
0.037
-3.688
0.000
軽い球
0.275
0.072
3.820
0.000
一発
0.286
0.032
9.013
0.000
四球
0.579
0.032
18.381
0.000
寸前
0.118
0.083
1.413
0.158
スロースターター
0.162
0.045
3.628
0.000
シュート回転
0.185
0.035
5.294
0.000
調子安定
0.158
0.059
2.671
0.008
調子極端
0.066
0.042
1.569
0.117
キラー
-0.152
0.035
-4.285
0.000
季節男
-0.169
0.091
-1.856
0.063
速球中心
-0.087
0.041
-2.119
0.034
変化球中心
-0.037
0.036
-1.041
0.298
対得点
0.003
0.001
4.014
0.000
リーグ1
0.241
0.074
3.264
0.001
リーグ2
0.211
0.060
3.539
0.000
リーグ3
0.052
0.040
1.302
0.193
リーグ4
-0.077
0.066
-1.175
0.240
リーグ5
0.199
0.054
3.676
0.000
リーグ6
0.126
0.055
2.291
0.022
0.840
修正済み決定係数
0.546
12156.95

上は分析に必要がないと判断した変数を取り除いたモデルの推定結果です。
この結果をもとに考察を進めます。


7.考察

特に気になった結果について以下に記述します。


・ 中継ぎ
中継ぎの係数は-0.737と非常に大きく、その差は特能3~4個分に匹敵します。なんとなく感じてはいましたが、まさかここまで差があるとは思いませんでした。
おそらくスタミナ消費の影響を受けにくいことが影響しているのだろうと思います。実際の疲労ありのオーペナではこの影響はもう少し小さくなるはずです。


・左投手
対左の特能の仕様が関係していると考えられます。現実の野球において左右のバランスは重要な要素ですが、オーペナで特に意識する必要はないでしょう。


・球速
一乗項が正、二乗項が負となっているため、上昇するにつれて防御率への寄与も増加します。中矢印・大矢印でもない限り、球速の遅い選手が鍛えるメリットは小さいです。

効果
140→145
0.056
145→150
0.137
150→155
0.217
155→160
0.298
160→165
0.379


・コントロール
一乗項が負、二乗項が正となっているため、上昇するにつれて防御率への寄与は減少します。裏を返せば、低いうちは優先的に伸ばすべきであると言えます。

効果
30→40
0.320
40→50
0.281
50→60
0.242
60→70
0.204
70→80
0.165


・球種
2球種→3球種よりも3球種→4球種の方が防御率への寄与は大きいです。体感通りです。

効果
2→3
0.163
3→4
0.565


・総変化量
一乗項が負、二乗項が正となっているため、増加するにつれて防御率への寄与は減少します。

効果
5→6
0.265
6→7
0.239
7→8
0.213
8→9
0.186
9→10
0.160


・最大変化量
一乗項が正、二乗項が負となっているため、増加するにつれて防御率への寄与も増加します。2→4が負となっていますが、最終的な効果は変化球に関連する変数全ての合計で考えれば良いので問題ないです。

効果
2→3
-0.117
3→4
-0.026
4→5
0.066
5→6
0.157
6→7
0.248


・最小変化量
他の変化球関連の変数とは異なり、有意となりませんでした。「変化量1の球種があるのはよくない」というのはどうやらオカルトのようです。


変化球と防御率の関係について、具体的な例をあげて考えてみます。


①球種2、総変化量6、最大変化量3の選手の総変化量と最大変化量がそれぞれ1ずつ増加した場合
→総変化量が6→7で0.239の良化、最大変化量が3→4で0.026の悪化となるため、合計で0.213の良化となります。


②球種2、総変化量6、最大変化量3の選手の球種と総変化量がそれぞれ1ずつ増加した場合
→球種が2→3で0.163の良化、総変化量が6→7で0.239の良化となるため、合計で0.402の良化となります。


③球種3、総変化量8、最大変化量4の選手の総変化量と最大変化量がそれぞれ1ずつ増加した場合
→総変化量が8→9で0.186の良化、最大変化量が4→5で0.066の良化となるため、合計で0.252の良化となります。


④球種3、総変化量8、最大変化量4の選手の球種と総変化量がそれぞれ1ずつ増加した場合
→球種が3→4で0.565の良化、総変化量が8→9で0.186の良化となるため、合計で0.751の良化となります。


やはり防御率に最も強く影響するのは球種の数であると言えそうです。


・対ピンチ
一乗項が負、二乗項が正となっているため、増加するにつれて防御率への寄与は減少します。特に赤特の場合は地雷であると言えます。

効果
1→2
0.425
2→3
0.365
3→4
0.304
4→5
0.244
5→6
0.183
6→7
0.123


・対左打者
ランクが1上下するだけで防御率に約0.32の違いが生まれます。練習効率を考えると最も優先度の高い能力かもしれません。


・ノビ
一乗項が正、二乗項が負となっているため、増加するにつれて防御率への寄与も増加します。赤特の影響が小さく、青特の影響は大きいと考えられます。

効果
1→2
-0.035
2→3
0.030
3→4
0.096
4→5
0.162
5→6
0.228
6→7
0.294


・四球
他の赤特と比べると圧倒的です。0.58の悪化は他の能力でも簡単にはカバーできないレベルです。下位指名の投手が所持していた場合は即放出でも問題ないでしょう。


・乱調
名前の印象で凶悪な赤特だと考えられがちですが、有意差なしとなりました。少なくとも積極的に消しにいく必要はなさそうです。


8.特能のランク分け

以上の結果を踏まえて、係数を基準に特能をランク分けしました。「有意差なし」は防御率に影響する可能性が低いことを意味しています。


係数
特能
SS
0.400~
鉄腕
0.300~0.400
対左打者
0.200~0.300
対ピンチ尻上がり奪三振
0.150~0.200
ノビキレ〇球持ち〇
0.125~0.150
打たれ強さ緩急〇内角攻め
0.100~0.125
逃げ球リリース〇
~0.100
クイック牽制〇速球中心
有意差なし
低め〇クロスファイヤー打球反応〇緊急登板〇球速安定回またぎ〇調子極端変化球中心テンポ〇
~0.000
調子安定
※係数は絶対値


9.推定の精度について

12球団を代表して、巨人の菅野投手の35回分の防御率と理論値を紹介します。オーペナの成績がブレやすいことを考えれば、それなりの精度だと思います。

理論値
1
3.03
2.86
0.17
2
3.64
2.89
0.75
3
1.86
2.92
1.06
4
2.33
2.86
0.53
5
2.81
2.95
0.14
6
2.42
3.09
0.67
7
2.87
3.11
0.24
8
2.24
3.09
0.85
9
2.66
3.09
0.43
10
2.96
3.06
0.10
11
1.65
2.03
0.38
12
2.42
1.98
0.44
13
2.14
1.92
0.22
14
2.71
2.03
0.68
15
2.99
2.05
0.94
16
1.95
2.04
0.09
17
2.54
1.96
0.58
18
2.11
2.01
0.10
19
2.34
2.03
0.31
20
2.13
2.07
0.06
21
2.18
2.07
0.11
22
2.50
2.10
0.40
23
3.19
2.15
1.04
24
1.43
2.09
0.66
25
2.10
2.17
0.07
26
3.02
2.22
0.80
27
2.22
2.20
0.02
28
2.76
2.19
0.57
29
2.53
2.24
0.29
30
2.18
2.21
0.03
31
3.11
3.75
0.64
32
3.06
3.77
0.71
33
4.22
3.77
0.45
34
2.76
3.78
1.02
35
2.99
3.76
0.77


10.最後に

データの打ち込みが死ぬほど大変だったので、一応それっぽい結果が出て安心しました。今回は対象を実在選手に限定したので、威圧感や重い球については検証に含めることができませんでしたが、また機会があればそういった特能の効果も調べてみようと思います。
次回はストレート系球種の効果について検証する予定です。
最後までご覧いただきありがとうございました!


使用ソフト