【パワプロ2020】打撃指標とチーム得点の関係について【ペナント検証】
0.目次
1.はじめに
今回はオーペナにおける打撃指標と得点の関係について考察していきたいと思います。
インターネット上に公開されているパワプロの検証は対照実験によるものがほとんどですが、今回は統計学及び計量経済学に基づいた回帰分析を用いて検証を行います。
解釈に必要な知識についてはその都度説明します。
「お前のやってることよくわかんねぇ!」という方も、「回帰分析」または「重回帰分析」で検索すれば、それっぽい記事が見つかると思います。
念のため、統計学についてわかりやすく説明してくださっているサイトのリンクを貼っておきます。
2.方法
・Ver.1.05の環境で検証
・リーグ編成は弄らずにセパ12球団のチーム成績及び個人成績を10年分記録
・データセットはA(5年分)とB(5年分)を併せて使用
・各チームの起用法は特能の有無や左右のバランスを見ながら筆者が恣意的に決定
・投手は50イニング以上投げた選手のみ分析に利用
・日程は早送りで2020年開幕戦から2020年シーズン終了までノンストップで消化し、データの記録が終わったらリセット
3.設定
・能力変化、ケガ、疲労、ノリノリ&スランプなし
・トレード、新外国人獲得なし
・選手の調子は「ふつう」で固定
・キャッチャーリード効果は「ふつう」に設定
・1軍と2軍の入れ替えなし
・投手は起用法を「おまかせ」に設定
・先発は6人、中継ぎは7人(A)または6人(B)に固定
・投手のスタミナは「全回復」に設定
・野手はスタメン、打順、守備位置を固定
・野手は起用法は「フル出場」に設定
・セの指名打者は9番に固定
・交流戦は全てパの主催試合に設定
参考までに西武の起用法を載せておきます。
A
B
詳しい起用法はこちらのリンクからどうぞ
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1eGRzN5eYC0LG0FtUiV5ypvxkgG6Hh95-5f_JjM-h3rQ/
4.OPSとRC27
初めに、得点に影響する代表的な指標で、かつオーペナで再現可能なOPSとRC27に注目しました。
上の2つのモデルは、被説明変数(Y)に12球団の得点の対数を、説明変数(X)に各チームのOPSとRC27を標準化(データの平均値を0、標準偏差を1に)したものと所属リーグ(DH制や対戦投手の能力差による影響を抑えるため)を加えています。
係数の大きさは得点への影響力を表しています。この結果から、両者は得点に対してほぼ同等の影響を及ぼしていると言えます。
これは被説明変数にOPS、説明変数にRC27を加えたモデルです。RC27の係数は相関係数なので、両者の間にはかなり強い相関があると言えます。
よって、以降はより直感的なOPSに絞って、関係する指標について分析を進めます。
5.長打率と出塁率
まず、被説明変数に12球団の得点の対数を、説明変数に各チームの長打率、出塁率、犠打、盗塁、所属リーグを加え、重回帰分析を行いました。
このモデルを見ると、長打率の係数はおよそ0.0085となっています。したがって、チーム長打率が.010上がると、得点は約0.85%上昇すると解釈できます。
例えば、得点600、長打率.380のチームが、他の指標はそのままに、長打率のみを.480まで上げた場合、得点は600×0.085=51増えると予想できます。
また、長打率のP値は1.57e-020となっています。P値は結果が否定される確率を表していて、この値が小さいほど、係数は正確であると言えます。1.57e-020は1.57×10のマイナス20乗で限りなくゼロに近い値なので、この結果は信用できそうです。
同様に、他の説明変数についても解釈すると、
・出塁率が.010上がると、得点は約2.1%上昇する
・パ・リーグはセ・リーグよりも得点が約7.2%多くなる
・犠打と盗塁の得点への影響は小さい
ということが分かります。
盗塁についてはP値が大きいため信頼度が低いですが、明確な影響力は否定できそうです。
このモデルは、説明変数を標準化したものです。
長打率と出塁率の係数を比較すると、出塁率の係数は長打率の係数の約1.3倍となっています。このことから、長打率よりも出塁率の方が得点への影響は強いと解釈することができます。
6.打率とIsoP・IsoD
長打率と出塁率は優秀な指標ですが、打率の影響を強く受けているため、純粋な長打力や出塁能力を測る際にはIsoPやIsoDを使う方が適しています。
そこで、今度は説明変数を各チームの打率、IsoP、IsoD、犠打、盗塁、所属リーグに変更し、重回帰分析を行いました。
この結果から、
・チーム打率が.010上がると、得点は約3.0%上昇する
・IsoPが.010上がると、得点は約1.0%上昇する
・IsoDが.010上がると、得点は約2.0%上昇する
ということが分かります。
なぜかリーグの係数が低くなっていますが、今知りたいこととは関係がないのでとりあえずスルーします。
先ほどと同様に、説明変数を標準化したモデルについても見てみましょう。
係数の大小関係は打率>IsoP>IsoDとなっています。
したがって、オーペナにおいて得点に最も影響する指標は打率であると考えられます。
なお、長打率<出塁率であるにもかかわらずIsoP>IsoDとなったのは、
長打率よりも出塁率の方が打率の影響を強く受けているためです。
7.結論
今回の検証の結果から、オーペナにおいて、チームの得点力を高めるためには、
①一定の打率を残せる選手を揃える
②長打力を上げる
③出塁能力を上げる
の優先順位でチーム作りをすることが最も効率的であると考えられます。
もっとも、この順番は各指標の上げやすさや選手の成長タイプによって上下するはずなので、その辺りは今後また検証していきたいと思います。
8.最後に
次回は視点をチームから個人に移して、打撃指標と基礎能力及び特殊能力の関係について検証する予定です。投手の指標についても近いうちにやります。
ここまでご覧いただきありがとうございました!
使用ソフト及び参考文献
- 作者:加藤久和
- 発売日: 2012/08/09
- メディア: 単行本